でこぼこや重なり

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本来はゆるやかな曲線上に並んで配列すべき個々の歯が、でこぼこしていたり重なっている状態を叢生といいます。6歳から8歳にかけて萌出する永久切歯の幅径は、上下顎とも乳切歯より大きく、左右4本を合計すると上顎で7mm、下顎で5mm以上も異なります。しかし、ヒトにはこれをある程度補償する歯列咬合の発育機構が備わり、すべての小児が切歯交換期前後に叢生になるわけではありません。

しかし、ただ観察していればよいわけでなく、学校や家庭における適切な口腔保健指導が不可欠です。ブラッシング(歯磨き)指導に加えて、生活習慣や食生活習慣を自ら改善するよう促します。子どもが積極的にCOを管理しようとする努力を通じて、自分の健康を自分で守る考え方を育むことを支援してあげて下さい。

 

pic_08_0叢生の治療では、歯列全体の長さ(周長)と個々の歯の大きさを足した長さとのずれ(ディスクレパンシー)がポイントとなります。ディスクレパンシーが僅かであれば、歯列を多少拡大しながら、歯列弓形態の歪みを治したり個々の歯の位置を修正します。一方、ディスクレパンシーが大きい例では、第一小臼歯などを抜去して生じた空隙を利用し、歯列全体を再配列する方法がよくとられます。

 

 

 

上顎前突の矯正

下顎歯列に対して上顎歯列が前方に突出している噛み合わせを上顎前突といいます。しかし、上顎骨そのものが突出しているわけでなく、小さ目な下顎が上顎歯列より後方位にあって深く噛み込み、かつ上顎切歯が唇側へ著しく傾斜する咬合状態です。唇を閉じようとしても口元が不自然になるなど、子ども自身への心理的影響も大きく、早期の治療を考慮すべき咬合異常の一つです。

 

pic_09上顎前突の成り立ちには顔かたちの遺伝的要因に加え、幼児期の長く続いた指しゃぶり、その後の唇を噛む癖(咬唇癖=こうしんへき)、口呼吸などが関連します。上顎前突の治療は、口腔内外の要因を考慮しながら、大まかな歯列弓形態と下顎の咬合位を修正する混合歯列期での治療と、個々の歯並びを整える永久歯列期の治療に大別されます。

 

 

混合歯列期での治療は、身長の伸びが著しくなり始める小学校の高学年頃に行うと効果的です。身長の伸びと下顎、特に下顎の高さの成長は相関が高く、装置の使い方によっては、この時期下顎の成長を促しやすいことが知られています。横幅の狭いことが多い上顎歯列弓を側方拡大した後、下顎の前方位と咬合の挙上を図る機能的顎矯正装置(アクチベーター)がよく用いられます。

 

反対咬合の矯正

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受け口すなわち反対咬合は、上下顎の前後的大きさの違い(上顎の劣成長ないし下顎の過成長)が主な原因である骨格性反対咬合、切歯の軸の傾き(切歯歯軸傾斜)や咬合時に下顎が前にスライドすることなどによる機能性反対咬合に大きく分類されます。両者の要因が混在することが多いのですが、治療は、前者が難しく後者は比較的容易ともいえます。

 

 

骨格性要因の強い反対咬合と診断された場合、早期に、できれば乳歯列期から治療した方が咬合の改善が容易となります。頤帽装置(いぼうそうち=チンキャップ)と呼ばれる口腔外に装着する装置などにより、1,2年かけて下顎の成長方向と量をコントロールします。一方、主に機能性要因からなる反対咬合では、上下永久4切歯が咬合した時点で、切歯歯軸傾斜や下顎の機能的前方位を、口腔内に装着する装置(アクチベーターなど)で半年から1年ほどかけて改善します。

 

pic_11反対咬合を混合歯列期までに改善しても、思春期以降、下顎骨の前下方への成長が著しく後戻りすることが時にみられます。下顎骨の成長予測が難しいという理由で、反対咬合の早期治療に否定的であり、成人後の主に外科的な治療を勧める意見もあります。しかし、咬合関係とともに舌の習慣性低位など口腔機能も改善し、思春期性成長期以前に、小児が個性正常咬合を獲得しうる環境を整えることには十分意味があると考えます。