夢あたたかき蓬莱(ほうらい)のしま2014.11.14

 鮮やかなオレンジ色、燃えるような深紅の葉が、晩秋のおだやかな陽光を浴びて、金色に輝いています。もし「幸福」に形があるのなら、こういうものかもしれません。

  かつて始皇帝は、紀元前221年に中国を統一した直後から不老不死の妙薬を求め、中国の東方の絶海の孤島にあるという伝説の仙境「蓬莱」に、若手技術者で組織した3千人もの探査隊を派遣しました。皇帝の探査隊は東海に漕ぎ出したもののそんな国があるはずもなく、やがて日本にたどり着いて穏やかに暮らしたと「史記」に書かれています。

 さて、始皇帝は結局49歳で亡くなりましたが、「東方の絶海の孤島に不老長寿の人たちが住む豊かな国がある」という噂はあながち間違いでもなかった証拠が、2000年の時を経た今、相次いで報告されています。

  まず、長寿については2014年版世界保健統計で、今年も日本が世界一の座を維持しました。しかも、今年は「富」の方でも日本が大躍進。キャップジェミニ&RBSによるワールドウエルスリポート2014の報告によると、2013年に日本の富裕層の比率が増え、富裕層の多さで、日本は米国に次ぐ世界第2位になったそうです。

  この報告書を見る限り、世界の富裕層人口は日米でほぼ過半数を占めています。さらに貧富の差の少なさでも世界第2位ですから、まさに「黄金の国ジパング」ですね。

  ただ、それが日本人の「個人の幸福感」につながっているかどうかは微妙なところ。その原因は、超高齢化社会への不安でしょう。特に若い人たちには社会的な支援が弱い上、高齢者の社会保障負担までのしかかって、申し訳ない限りです。

  でも、それを考慮しても、今の日本の社会が実力以上に自信をなくしているのは確かです。
  初夏に、日本随一の健康長寿で有名な長野県の安曇野に、がん患者さんのグループと旅をしたとき、日本のほんとうの豊かさに触れた気がしました。

  北安曇野郡池田町は、北アルプスの小さな町。
  ご多分に漏れず、若い人もコンビニや大病院も少ないけれど、昔ながらの農作業の他、特産ワインや地ビールを作り、広大なカモミール畑の収穫を化粧品や入浴剤などに加工して、地元の高齢の人たちが元気に働いていました。

  町の食堂や宿舎では、料理自慢のおばあちゃんたちが腕を振るって、おもてなし。山菜の天婦羅、根菜の煮もの、太いアスパラガスのクルミ和えなど、おいしさも栄養価もバランスも素晴らしいものでした。
  そして、昔ながらのお料理を私たちに教えてくれるおばあちゃんたちのカッコよさ。あの人懐っこい笑顔を思うと、つい、つられて笑ってしまいます。
  今頃は北アルプスの山々も、紅葉に染まっているのでしょうか。

コラムニスト 鈴木 百合子